家を建てるために土地を探す際には、用途地域に注目することが重要です。
なぜなら、用途地域の種類によって、その土地の大まかな雰囲気や周囲の環境、利用制限などを推測することができるからです。
今回は準工業地域という用途地域について詳しく説明し、土地選びにおいて注意すべきポイントを解説します。
準工業地域
多くの人々は「工業」という言葉から、準工業地域が住宅に適していないと思うかもしれませんが、実際には工場地域とは異なる雰囲気を持つエリアであり、住宅を建てることもできるのです。
まずは、準工業地域の一般的な特徴について見てみましょう。
準工業地域のメリット
一般的には、用途地域は「住居系」「商業系」「工業系」という3つのタイプに分類されています。
住宅を建てる場合、住居系地域が最も一般的な選択肢とされています。
全13種類の用途地域のうち、8つは住居系に該当し、基本的には住居のための環境が整備されています。
これは、住宅を建てる場合には非常に重要な特徴です。
一方で、準工業地域は用途が多様であり、建てられる建物の種類も多いです。
そのため、日常的な買い物や飲食などが比較的便利に感じられることもあります。
また、準工業地域のもっとも大きな利点は、他の用途地域と比較して土地価格が割安な傾向にあることです。
広さや利便性の面で満足できる土地を、比較的お手頃な価格で見つけることができる場合もあります。
そのため、穴場として注目されている場所と言えます。
したがって、用途地域は住居系と準工業地域という2つのタイプに大別されることが分かりました。
住居を建てる場合は、住居系地域を選ぶことが一般的ですが、準工業地域にも魅力があります。
価格が割安だったり、利便性が高かったりといった特徴があり、一考する価値はあります。
準工業地域の特徴
準工業地域とは、一般的に軽工業の工場やサービス施設が立地している地域のことを指します。
この地域では、工場の他にも一戸建て、小規模工場、マンション、店舗、飲食店、オフィスビルなど、様々な建物が混在しています。
イメージとしては、昔ながらの職人街や町工場街を思い浮かべることができるでしょう。
準工業地域は、工業専用地域とは明確に用途が区別されています。
工業専用地域では主に工場が集まっており、騒音や産業廃棄物、危険物などが発生することが一般的ですが、準工業地域ではそれらの危険性や環境への悪影響を抑えるため、規制や制限が設けられています。
具体的には、準工業地域では危険性が大きな工場や環境を著しく悪化させる恐れのある工場の建設が禁止されています。
さらに、火薬類や石油類、ガスなどの危険物が多量に貯蔵される施設の建設も禁止されています。
つまり、工業専用地域や工業地域で見られるような高い危険度を持つ工場は、準工業地域には存在しないのです。
このような規制や制限が設けられることにより、準工業地域では安全性や環境への配慮が重視されています。
地域住民や周辺環境との調和を保ちつつ、軽工業やサービス業が営まれることで、地域経済の活性化や雇用の創出が期待されています。
準工業地域で適用される規制・制限
準工業地域は、住宅地域とは異なり、建物に対する規制や制約が緩やかな特徴を持っています。
この地域では、建物に関する主な制限の内容を詳しく見ていきましょう。
建ぺい率・容積率
建ぺい率とは、土地の建物を建てる面積の割合を表す指標です。
具体的には、敷地面積に対して建築面積(建物を真上から見た面積)がどれだけ占めるかを示します。
建ぺい率は土地ごとに設定されており、一般的には30~80%の範囲で設定されています。
例えば、同じ広さの土地であれば、建ぺい率が大きいほど、より広い建築面積を確保することができます。
準工業地域の土地では、建ぺい率は「50%、60%、80%」の3段階に設定されています。
これは、第一種住居地域や第二種住居地域、準住居地域と比べると、建ぺい率が大きいことを意味します。
つまり、準工業地域の土地では、敷地に対して広い建物を建てやすい環境が多く存在しています。
一方、容積率は、土地の延床面積(合計床面積)が敷地面積に対してどれだけ占めるかを示す指標です。
例えば、敷地面積が100平方メートルの場合、容積率が200%であれば、延床面積は200平方メートルとなります。
準工業地域の土地では、「100%、150%、200%、300%、400%、500%」の6段階で容積率が設定されています。
これも、住居専用地域よりも大きな数値が特徴です。
一戸建ての場合、200%以上の容積率が必要なケースはほとんどありませんが、マンションの建築などでフロア数が多い場合、容積率が非常に重要になります。
準工業地域の土地では、一定の高さを持つ建物が建てられることが予想されるため、この点にも注意が必要です。
高さ制限
住宅地域では、一部の地域では「絶対高さ制限」という高さを制限する規定が設けられています。
これは、建物の高さに制約を加えることで、周囲の景観や住環境を保護するために行われます。
一方、準工業地域では、一般的に高さ制限の規定は存在しません。
これは、商業や工業の活動においては建物の高さが重要な要素ではないためです。
しかし、準工業地域においても、他の規制が存在します。
たとえば、斜線制限や日影規制などです。
斜線制限は、建物が周囲の建物に対してどのような角度で建てられるかを制限するもので、建物の高さと関係しています。
また、日影規制は、建物が周囲の地域にどの程度の影を落とすかを制限するものです。
これらの規制により、準工業地域では日当たりの条件が商業地域よりも良好な場合が多いです。
つまり、住宅地域と準工業地域では、建物の高さに関する規制が異なります。
住宅地域では絶対高さ制限が設けられる一方、準工業地域では高さ制限の規定は存在しません。
ただし、準工業地域でも他の規制があるため、建物の配置や日当たりについては商業地域よりも考慮される傾向があります。
準工業地域を選ぶ際の注意点
準工業地域は、多くの利点が存在する場所です。
しかしながら、土地を選ぶ際にはいくつかの注意点がありますので、それらを無視して土地の購入を行うことはできません。
土壌チェックを行う
工業地域の土地を購入する場合、土壌の汚染の有無を確認することは重要です。
これにより、安心して土地を購入することができます。
土地を候補として見つけたら、まずはその土地がこれまでどのように使用されてきたのかを調べます。
工場や製造施設が存在していた可能性があり、そこで有害な物質が使用されていたかもしれません。
これにより土壌汚染のリスクがあるかどうかをチェックします。
さらに、土壌汚染の状況を正確に把握するために、専門の調査機関に依頼することも考えましょう。
彼らは場合によっては土壌サンプルを採取し、詳細な分析を行います。
これにより、土壌が汚染されていないかどうかを確認することができます。
土壌汚染は環境や健康に悪影響を及ぼす可能性がありますので、購入前にしっかりと調査することは重要です。
これにより、土地を購入した後に後悔することなく、安全かつ効果的に利用することができます。
工場や空き地の有無を確認しておく
準工業地域では、工場の建設による環境悪化や危険性が低い範囲であれば許可されていますが、完全な禁止ではありません。
したがって、近隣の建物や施設、通り抜け可能なエリアなどを注意深くチェックし、大規模な工場が存在しないかを確認する必要があります。
また、現時点ではまだ該当する工場がないかもしれませんが、将来的に建設される可能性もあるため、建築可能な未利用地があるかも確認しておくことをお勧めします。
まとめ
用途地域の確認方法はいくつかあります。
まずは、市区町村役場で都市計画図を調べることができます。
役場に行って専門の担当者に相談すると、具体的な地域の用途について詳しく説明してもらえるでしょう。
また、インターネットを利用することでも、簡単に地域の用途を確認することができます。
土地選びの際には、これらの方法を利用しておくと良いでしょう。
ただし、土地によっては複数の用途地域にまたがっている場合もありますので、注意が必要です。
もし異なる用途地域にまたがっている場合、建物の種類や建ぺい率・容積率については、異なる考え方が適用されます。
具体的には、建てられる建物の種類については「より広い割合を占める方を採用する」という考え方が適用されます。
また、建ぺい率や容積率については、実際の割合を基に按分されることになります。
もし土地の用途に関して不安がある場合は、不動産会社や施工を依頼する会社の担当者に相談してみることをおすすめします。
彼らは地域の用途について詳しく知っているだけでなく、建物を建てる際の具体的な制約についても教えてくれます。
ですので、事前に相談しておくことで、後々困ることがないようにすることができるでしょう。